惚れたら負け─お前のこと好きになった─
一ノ瀬さんに助けられたのは…事実なんだけど…


「…惚れてません!だけど、助かりました。ありがとうございました。」


「は?」


一ノ瀬さんを見るとまるで私がそんな事を言うなんて思ってもなかった、というように複雑な表情を浮かべていた。


「でも!私が一ノ瀬さんを好きになることはないので、もう助けて貰わなくて結構です。」


そう言ってから勢いよく頭を下げて、私はその場を立ち去った。


「あいつ…何。」


私のいなくなったその場所で、一ノ瀬さんが顔を赤くしていた事を、私は知らない。
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