惚れたら負け─お前のこと好きになった─
「なんか、寂しい…一ノ瀬くんと過ごすの結構楽しかったんだけどな…」


……聞こえたかな、一ノ瀬くんに。


「…一緒に過ごす?」


「へ?」


花火の音に声が飲み込まれていく。


「夏休みが終わったあとも」


な、にを言ってるの……


だって、お父さんもお母さんも、慧ももう帰ってくるよ…??


「一ノ瀬くん……」


「叶愛」


「………だよ」 『ドーン!!!』



一ノ瀬くんの声と花火の大きな音が重なる。


口の動きを脳内で何度も再生するけど、なんて言ったのか、正解は分からない。


「ごめん、聞こえなかった…」


「……ん、いいよ、また伝えるから」


「ごめんね、」


申し訳ない気持ちで一ノ瀬くんを見つめれば、一ノ瀬くんはいつも通り優しく、ふっと笑った。


寸分のズレもない美しい顔で。
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