惚れたら負け─お前のこと好きになった─
「はいっ!こちらこそありがとうございましたっ」


笑顔で返すと、何故か一ノ瀬くんに肩を掴まれた。


「先輩、手出さないでくださいね。俺のなんで。」


先輩の方を見ると、先輩の瞳は小さく揺れていた。


「何を…言ってるんだ?」


「忠告です。じゃあさようなら。」


一ノ瀬くんは私の手を取って、俗に言う恋人繋ぎの形に指を絡めた。


「えっ、」


「帰るぞ。」


「う、ん。」


一ノ瀬くんに引かれて、夕日の差す廊下を歩く。


吹奏楽部の演奏が響いていて、その雰囲気に青春を感じる。


「叶愛、どっか行きたいところあるか?」


行きたいところ…?
あっ!!!待って、今日、何日!?


…4月15日…。


「今日、弟の誕生日なのっ!ケーキ買って帰るってお母さんに言ってて…」

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