惚れたら負け─お前のこと好きになった─
そんな自分に腹が立って、俺は下唇を噛んだ。


このままほっとく訳にはいかない。


そう思って、気づいたら俺は、叶愛の後を追っていた。


「叶愛っ!」


小さな背中を見つけた俺は、叶愛の右手を掴んだ。


「悪かった…。」


「違う…。一ノ瀬くんが悪いんじゃないの。ただ、ちょっとね…」


笑顔を作ろうとしているのか目を細めて、口元を震わせながらなんとか口角を上げている叶愛。


「……分かった。人がいるところではもうあんなこと言わない。ただ……」


「…う、ん?」


「2人の時は、全力でいくから。」


こんな姿の叶愛を見て、俺の最大限に引き出した答えだった。


「……本当なのか嘘なのか分からないよ…。」
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