惚れたら負け─お前のこと好きになった─
後ろを歩く俺たちの方を振り向いて手招きをする叶愛。


「入っていいよ。」


俺が声を出すより先に、今川が目を細めて、声をかけた。


叶愛はそう言われても、ちゃんと俺たちが来るのを待ってから、平井さんと2人で店の中へと足を踏み入れた。


俺は…外で待ってるか。女ばっかりの中に入っても胸糞悪いだけだから。


「一ノ瀬は中入んねぇの?」


「…あぁ。」


正直、こいつと話したくない。


「そう。」


なんだ、こいつの煽ったような話し方は…。


叶愛になんかするとかじゃねぇだろうな?


嫌悪感が湧き上がってきて、思わず舌打ちをこぼすと、今川は余裕そうに笑って、店の中に入っていった。


壁によりかかって、しばらく待っていると、当たり前のように叶愛が笑顔を浮かべて俺の方へやって来た。
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