惚れたら負け─お前のこと好きになった─
ハッキリと言葉を出せなくて反射的に俯くと、優しい、一ノ瀬くんの声が届いた。


「なんか、会ってたのに、会ってないみたいだった。」


「えっ、うん、そうだね…」


「ゆっくりでいい。無理に近づかない方がいいなら、ここにいるから。」


そんなふうに言われると、何だか嬉しくて、私の口からはまるで押されるように言葉が出た。


「あのね、好きとか、そう言うのは分からないんだけど……私、この2週間、一ノ瀬くんがいなくて暇だった。」


「うん。」


「それで、今まで充実していたのは、一ノ瀬くんのおかげだったんだなって…気づいて…」


「うん。」


「だから、…」


私は、席を立って、一ノ瀬くんの方へ近づいて、そして、その服をそっと掴んだ。
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