いつか僕にもみせて
「どこまでなら見られるの?」


気をつかったわけでもなく、純粋な疑問。普段この話をすると無理に慰められることが多いせいで、慣れない言葉に返事ができず、言葉につまってしまう。
それでも彼は私の言葉を待っていてくれた。

震える手を持ち上げて、彼の胸元の、ちょうどネクタイの結び目にかざす。


「このあたりまで、ならなんとか…」

「そっかぁ」


そのまま掴まえられた手と、少し屈んだ彼の顔。そう、さっきまでネクタイだった場所。


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