気だるげオオカミの不器用ないじわる
最悪上等、新谷くん
*
*
いやな予感はした。
「ちょっと遅いんじゃねーの?」
「…え?」
春休みに入る直前の3月下旬。
放課後、わたしのクラスで、窓際の前から2番目の席に座って気だるそうにこっちを見上げてきたのは、
「俺は早く帰りたいんだけどねぇ」
この学校に知らない人はおそらくいないだろう、人気者の新谷くんだった。
もう一度言うけど、いやな予感はしたんだよ?
だけど、素通りするわけにもいかず、忘れ物を取りに来たわたしは教室に入るしかないわけで。
まさか新谷くんから話しかけられると思ってなかったから、動揺して頭にハテナが浮かびまくる。
…えっと、新谷くん、なんて言ったっけ?
遅いとか……、早く帰りたい、とか…。
ていうか、そもそも、知り合いかのように話しかけてくるけど、一度も話したことはないし。
「…あの、」
「まぁ、来たならさっさと行こうよ」
……どこに?
あまりにまっすぐな視線を向けられ、もしかして後ろに誰かいる? と思って振り返ってみるけど、わたしだけなんだから、やっぱり新谷くんの話し相手はわたしらしい。
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