気だるげオオカミの不器用ないじわる


「ちなみに、なに味?」

「いちご」

「まって、わたし、いちごには目がないの!毎年、いちご狩りに行って食べるんだけど、甘いのをゲットするにはコツがあってね?ヘタの裏まで赤いやつとか、つぶつぶまで赤いやつを選ぶと、ほんっとにおいしいの!」

「…おー、そこまでは聞いてねーよ?」



おっと、ついヒートアップしてしまった。
新谷くん相手なのに。



「ん」


軽く握られた拳が差し出され、手のひらを当てると、可愛い包装のチョコが3つ。



「くれるの?やったぁ!
たまには新谷くんもいいことするんだね、ありがとっ」

「ほんと、ひと言余計だな」


ふっと笑う新谷くんが、女子の対応に追われている彼方くんの方に戻っていく。



「ふふ、あとで大事に食べよー」


新谷くんからのチョコでこんなに有頂点になってるわたしは、たぶんちょろいやつだ。

それでも、甘いものが好きなことを覚えてくれていて、分けてくれた優しさは、素直に嬉しかった。



いつのまにか苗村さんのところに行っていたサナちゃんを見つけ、一緒に混ざる。

ひと通り見終わった頃、解散の合図が出された。


正直、昔ながらの建物の良さはわたしには理解しきれなかったけど、興味がなくてもいいから体験のひとつとして見ておきなさい、という先生の言葉に納得して、わりと楽しむことができた。



< 126 / 321 >

この作品をシェア

pagetop