気だるげオオカミの不器用ないじわる

そんなにおかしな質問だっただろうか。

彼方くんの目がぱちくり瞬く。






「ふっ、しんたにってもしかして、優星のこと?」

「え、うん」


当然のように頷くわたし。

すると、なぜか盛大に吹き出された。




「沙葉ちゃん、優星の名字は"あらや"だよ。 新谷優星」




……ん?




「…え、………え!!?」




また大きな声が出てしまう。








あらや!?

しんたにじゃなくて!?





嘘でしょ、今までずっと、しんたにくんだと思ってたのに……。




「しんたにはないでしょ、しんたには」


隣からはバカにしたような流し目が突き刺さる。



……最悪だ。
恥ずかしすぎる…っ。



「だって、みんな、優星、優星ばっかり言うから、名字なんて知らなかったんだもん」



そうだ、女子がきゃーきゃー騒いでるのは知ってたけど、みんな名前で呼んでたから、名字なんて知らなくて。

そんなにかっこいいんだって思いながら、バレンタインの時にどさどさプレゼントが積まれていく下駄箱のフルネームを見て、覚えたんだっけ?
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