気だるげオオカミの不器用ないじわる
「…あ、えっと、」
出す言葉は決まっているのに、胸元にむずがゆく彷徨ったまま、なかなか出てこない。
オロオロする口元をなんとか引き締める。
「………ありが、とう……」
弱々しい声。
下を向く頭。
きっと、新谷くんの目は驚きを放っているだろうから、合わせられない。
それでも、ありがとうくらいは言っておきたかった。あとからだと余計に言えなくなるし。
動きが止まったようになにも言わない新谷くんのせいで、気まずさが宙に舞ってさらに落ちつかなくさせる。
やっぱり、変だった?
感謝の伝え方、まちがえた?
おそるおそる顔をあげたのと同時。
「あー、マジで…」
「………え?」
視界に映ったのは、少し困ったような新谷くんだった。
てっきりバカにされると思っていたのに、予想外の反応。