気だるげオオカミの不器用ないじわる
お願いだから、言わないで!
「…ふっ、まぁ、そんなとこ」
わたしの切実な願いが伝わったのか、新谷くんが諦めてくれたみたいだ。
「そうなんだ! 知らなかったよー」
……はぁ。
納得した様子の彼方くんを見て、伸ばしていた背筋の力を抜く。
なんで新学期早々、こんなに疲れなきゃいけないの……。
結局そのまま先生が来て、席つけーって言われたから、あんまり彼方くんと話せなかった。
昼休みにサナちゃんが、さっきのどういうこと!? ってすごい形相で駆けつけてきたけど、さすがにキスのことまでは言えなかった。
彼方くんの近くに新谷くんがいるんじゃ、話しかけるのも大変そう…、、
「あーーー、どうしよう…」
あの日、忘れ物さえ取りに行かなければ。
そう思わずにはいられなかった。