気だるげオオカミの不器用ないじわる
革靴を脱いで下駄箱に入れたところで、周りの空気にざわめきを感じて振り返った。
すると、なぜか、目線が合う人みんなに逸らされる。…なんでだろう。
「ね、あの子でしょ?」
「そうそう、可愛川さん」
「3組の彼方くんのこと好きなんだって」
やがて聞こえてきたワードに、ごくりと唾を飲み込んで、足を止めた。
「修学旅行の時、トイレで話してるの、聞いた人がいたらしいけど」
「でも、問題はそこじゃなくて。彼方くんのこと好きなくせに、優星くんまでたぶらかしてたんだって」
「えっ、あの優星くん?」
「そう、純粋そうな子ほど、なにするかわかんないよねー」
………なんで、
意味が、わからない…
わざと聞こえるように言っているのか、話をしている女子たちを信じられないという目で見ると、見下すように鼻で笑われる。
たしかにあの日、トイレで彼方くんのことを話してた。それを誰かにこっそり聞かれてたってこと?
……悪い夢であってほしい。
そう思ったけど、視界はぼんやりしてないし、身体もふわふわしてないし、ここは紛れもなく現実だ。