気だるげオオカミの不器用ないじわる


彼方くんの傷を見たんだろう。

新谷くんの顔がだんだんこわばっていくように変化する。



「あいつか」

「ちがうから、ぶつけただけだよ」

「そんなわけねーだろ」

「ほんとだって」


交わされる内容を聞いているしかできなかったわたしだけど、ふたりの会話に不自然なものがひとつ。



あいつって………だれ?


思い当たる人でもいるのか、新谷くんがなにか考えこむように黙る。




周りもひそひそ、こっちを向いて話しはじめる。

けれど、先生が入ってきたことによって辺りは静まった。







なんだか不穏な1日になりそうな予感は、だいたい外れてはくれない。



そして、それは思ったよりも早く訪れた。


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