気だるげオオカミの不器用ないじわる


新谷くんは、ずるい。

自分で種だけ蒔いて、それがどうなろうと自分に危害を加えようと気にしない。

みんながひそひそ話しててもヘラヘラ笑ってる。

誤解される前に、ひと言でいい。
心配だった、なにもしてない、そうやって本音をぶつければ、拗れることだってないのに。

彼方くんにもういいって突き放されてもなにも言わない。


そのくせ、わたしにはあんな、寂しそうな顔を見せる。




……新谷くんは、ずるいよ。







「沙葉ってほんとめちゃくちゃだよね」





だからほんとに、
それはこっちのセリフなんだよ。





「俺のこときらいなのに、心配はするのな?」

「それはっ」

「正義の味方ってやつ?」

「ふざけないで」

「ふざけてねーよ?本気で言ってる」



ゆっくり目を伏せた新谷くんがもう一度目蓋を押し上げた時、まるで遠いものでも見つめるように瞳が動いた。
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