気だるげオオカミの不器用ないじわる
でもどこかで、家族がもういないと認めたくなかったのかもしれない。
それからは、男の言うとおりに過ごした。
家の掃除、皿洗い、ご飯の支度。
男がソファーでテレビを見ながら大口を開けて笑っていても文句は言わなかった。
たばこの吸い殻を男が落として火の手が上がったときも、なんとかしろと叩かれて、自分の手で火を消した。
はじめてできた兄という存在。
そいつの宿題をやれと投げつけられた時も、机にかじりついて必死に解いた。
そうやって暮らしていく日々、自分が普通じゃないと思いはじめたのは、中学生になってからだ。
「ねぇ、あの兄弟、ほんとの兄弟じゃないらしいよ」
「それ私も聞いた!母親に捨てられて、養ってもらってるんでしょ?」
「なにそれ、ニセ家族じゃん」