気だるげオオカミの不器用ないじわる

噂を流したのは兄だとわかっていた。

ニセ家族、そう言われてもぴんとこなかったけど、よその家族が手を繋いで買い物をしていたり、CMで母親がご飯を作ってそれを美味しそうに食べている様子を見るたびに、自分のなかに棘のようなものがひとつずつ刺さっていくようだった。



それから、自分と他人を比べるようになった。



なんで俺は避けられる?

なんで嵐の日は誰かが迎えに来てくれるんだ?

なんでみんな笑ってるんだ?

なんでそんなに人生が楽しそうなんだ?



ぜんぶ、わからない。

いくら周りを観察しても、なにひとつ、感情がわからなかった。




「おせぇんだよ、どこ行ってた!?おまえ最近、妙な考え起こしてんじゃねーだろうな?いいか、おまえは俺の言うとおりに勉強して、いい大学いって、金稼いでもらわないと困るんだよ!」
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