気だるげオオカミの不器用ないじわる

いつものように男が暴れる。

その息子はそれを見て笑う。

床には散乱した酒類と土足で入った足跡。

これが俺の日常だった。




「おまえ、ほんと目障りなんだよな」



大きくなるにつれて兄は俺を嫌っていった。いや、正確には、俺の成績が上がるのが気に食わなかったんだろう。

そんなある日、成績表を見て怒られた兄は俺に本気で腹を立てたらしい。


体育館近くに連れていかれ、数人に囲まれて、わけもわからず暴力を受けた。
俺が弱ったところで現れたあいつは、最後に思いっきりの力で手足を踏んづけていきやがった。



その瞬間、唐突に笑ってしまった。

……ああ、なんで俺はこんなことになってんだって。




それでもなにもしなかったのは、どうしていいかわからなかったのが半分と、俺は結局ひとりだと認めたくなかったのが半分。
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