気だるげオオカミの不器用ないじわる


けれど、そんな毎日も突然、終わりを迎えることになる。




男がなにやら偉い人に会うから、最後に渡すおみやげを俺に買ってこいと言った日のことだった。


車で目的の場所へ向かっていた最中、事故が起きた。

原因は男のよそ見運転。

朝から機嫌がよかったらしい男は、下手くそな鼻歌で調子に乗った運転をしていた。そのせいで、前の車に突進。



「ふざけんなよ、おまえっ」


運悪く、前の車にはガタイが大きく荒々しい風貌の2人組が乗っていた。

怪我はなくても怒りは湧いてくる、こういう連中はみんなそうなのか、男はあっという間に引きずり下ろされる。



「どこ見て運転してたんだよ、なあ?」

「ち、ちがうんです」



この男でもこんなふうに萎縮することがあるのか、そんなふうに悠長にかまえていた直後、次に引きずり下ろされたのは俺だった。
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