気だるげオオカミの不器用ないじわる


こんな人生、もう捨ててやる。

柄の悪い連中の視線が俺に移った隙に車で逃げていった男を尻目に、そう誓った。



ちゃんと学校に通わせてもらえている。

ちゃんと帰る家がある。

ニセ家族でも、ちゃんと、ちゃんと……うまくやれている。


そう言い聞かせてきた自分に、あんな男たちでも縋るしかなかった自分に呆れて、気づいたら、この日、小さい時以来の涙が出ていた。



それでも悪運は尽きなかったらしい。

ひとりで家に帰って最小限の荷物を持って逃げようとしたところで、兄に出くわした。



「なにしてんだよ」


どす黒いオーラで荷物ごと引っ張られ、俺は床に倒れ込む。

暴れられた拍子に窓ガラスが割れて後ずさると、今にも殺しそうな目で睨まれた。


「あんま調子乗んなや、なあ。親父の言うことだけ聞いてればいいってまだわかんねえのかよ。てか、それ以外におまえになんの価値があんの?」
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