気だるげオオカミの不器用ないじわる

子は親に似る、その言葉が似つかわしいほどにそっくりだった。


俺がずっと、こいつらのために生きる?

……冗談じゃない。



ろくに栄養も摂っていない身体で必死に家から遠ざかろうとする。

舌打ちをした兄がガラスの破片を手に取って、俺に覆い被さってきたことは、正直、思い出したくもない。




なんとか逃げ出して、血まみれになった身体で、ふらふらになりながら道を歩いていると、見知らぬ人が病院まで連れていってくれた。



とにかく、ここから立ち去りたい。

あいつらのいないところに行きたい。


強い決心で、腹の傷も癒えないうちに街を出た。

名残惜しいものなんてひとつもなかった。

誰も知らないところで、住む手続き、受けられる支援のすべてを調べてひとり暮らしを始めた。



転校してからだと思う、嘘のように人格が変わったのは。

いや、変わったのとは少しちがう。

感情が乏しかった俺は、元々冷たい人間だったし、根本は変わってないけれど、表面上では大きく変化した。
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