気だるげオオカミの不器用ないじわる
支離滅裂、新谷くん
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「沙葉ー!サナちゃん来たぞー」
「はーい、今いくー!」
いつものように呼ばれたお父さんの声に、パタパタと足音を鳴らしながら玄関へ向かう。
制服はアイロンをかけた。
蝶ネクタイも真っ直ぐにした。
新しいリップも塗った。
「おはよう、サナちゃん」
今日は、気分がいい。
「あれ、なんか沙葉、今日いつもより可愛い」
「えっ」
「あ、唇の血色がいいんだ、リップでしょ」
さすがはサナちゃん、大正解。
なんでもお見通しだ。
「なになにー?可愛く見せたい相手でもいるの?」
「き、気分だっただけだよ」
「ふーん?」
コクコクとひとりでに頷くサナちゃんの微笑みは、もうぜんぶ見透かしている気さえしてくる。