気だるげオオカミの不器用ないじわる
届かない2センチ、新谷くん
*
*
───なんで、わたしはこうなんだろう。
人のことなら、こうしなよとか言えるくせに、自分のこととなると、一気にどうしたらいいかわからなくなる。
しかも、こんな日に、新谷くんと日直だし。
「はぁ」
このままだとくしゃくしゃに萎んでいまいそうな胸の内を少しでも押し出すように空気と同化させる。
ひとりでいると憂鬱だけど、サナちゃんは美術部の顧問に呼ばれて行っちゃったし、中庭で食べてるお弁当はさっきからあまり箸が進んでない。
仕方なく卵焼きをつついていると、砂を踏む音がして、そこに影ができる。
わたしは自然と視線を上げた。
「可愛川さん」
「あ…」
そこには、数日ぶりの苗村さんが。
なんとなく、あの後ふたりはどうなったのか気になってたけど、あえてなにも聞かなかった。
それでも時々、目が合って嬉しそうにしているふたりを何度か見かけたから、内心うまくいったんだろうと思ってる。