気だるげオオカミの不器用ないじわる
「お礼を言おうと思って」
「お礼?」
「彼方くんとちゃんと話せたから、可愛川さんのおかげ。ありがとう」
「あ、えっと…どういたしまして」
なんだか真正面から感謝を言われ、たじろいでしまう。
ちゃんと話せたならよかった。
……と、そういえば。
「話せただけ?」
「え?」
「なんか進展とか」
「えっ」
わかりやすく泳ぐ目。
苗村さんは意外と顔に出るタイプだね。
「もしかして、また付き合うことになった?」
あからさまにニヤッとするわたしに、苗村さんが頬を赤らめて小さく頷く。
「ふふ、そっか。おめでとう!」
「ありがとう…」
ほんとに嬉しそうに微笑む苗村さんは、保健室にいた頃とはまるでちがう様子で、わたしはちょっと羨ましいな、なんて思ってしまう。