気だるげオオカミの不器用ないじわる
ベランダに出て黒板消しの粉をパタパタさせてみたけど、数秒で戻ることになるし。
新谷くんはそれはもう静かにペンを走らせてるし。
物音と風だけがいつもより大きく聞こえて、居心地の悪い沈黙になる。
前の黒板を消し終わって、後ろのも早く終わらせようと手を伸ばすけど、上の部分だけどうしても手が届かない。
わたしは近くにあったイスを引いた。
それとほぼ同時に、この間と同じ、いやな光景が目に入る。
「ちょっと優星ー」
現れたのは、数日前の女の子。
また来てる、あの子。
新谷くんと親しいのかな…。
黒板を消そうとイスの上に足を乗せたけど、様子が気になり、耳の意識が澄まされる。
「なんでこの間あのまま帰っちゃったのー、わたし待ってあげてたのにー」
「…べつに、気分じゃなかった」
「なにそれー、もう」