気だるげオオカミの不器用ないじわる

ベランダに出て黒板消しの粉をパタパタさせてみたけど、数秒で戻ることになるし。

新谷くんはそれはもう静かにペンを走らせてるし。


物音と風だけがいつもより大きく聞こえて、居心地の悪い沈黙になる。



前の黒板を消し終わって、後ろのも早く終わらせようと手を伸ばすけど、上の部分だけどうしても手が届かない。

わたしは近くにあったイスを引いた。


それとほぼ同時に、この間と同じ、いやな光景が目に入る。





「ちょっと優星ー」


現れたのは、数日前の女の子。

また来てる、あの子。
新谷くんと親しいのかな…。


黒板を消そうとイスの上に足を乗せたけど、様子が気になり、耳の意識が澄まされる。



「なんでこの間あのまま帰っちゃったのー、わたし待ってあげてたのにー」

「…べつに、気分じゃなかった」

「なにそれー、もう」
< 287 / 321 >

この作品をシェア

pagetop