気だるげオオカミの不器用ないじわる

それを追うように下半身も動いたけど、


「っ、あ」


イスに乗っかっていることを忘れていたわたしに、行き着く足場はない。


やばい、落ちる…っ。


そう思った瞬間、着地したのは、



「気をつけろよ」



新谷くんの腕のなかだった。




目を瞬くまでもなく、近い距離でピアスが揺れる。


「ごめんっ」


どっくん、と大きく脈打った心臓に抗うように、とっさに離れた。





……なにしてんの、なにしてんの、なにしてんの。

イスの上だったこと忘れるくらい聞き耳立てるなんて、わたしのバカ。

これじゃ、ぜったい挙動不審に思われる。




「じゃあ、俺、もう帰るわ」


おどおどしていた脳内は、新谷くんのひと言で一気に冷める。



「帰るの?」

「日誌、書き終わったし」

「あ…」


そっか。そうだよね。

書き終わったなら、あとは先生に提出するだけだし、帰るよね。
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