気だるげオオカミの不器用ないじわる


「あのさ、昨日のことなんだけど、」

「話したくない」



それでもと思い、勇気を出した言葉も、一方的に拒否される。



「なんで?」



こっちは聞きたい。

なんで急に態度が冷たくなったのか。

約束のことと関係ないなら、なんなのか。

昨日………あんなことしたのは、なんでなのか。

ちゃんと聞きたいのに。



「彼方と仲良いのは勝手だけど、俺、しばらく沙葉と話したくねーわ」

「……急に意味わかんないよ」



話したくない?

しばらくってどれくらい?

なんでわたしとだけ?


知りたいことが塵に積もって、手に追えない。





「沙葉といると、イラつくから」


「っ……」



ぽつりと落とされた最後の言葉に、泣きそうになる。

…なんでだろう、可愛い女の子と帰ってるの見ても泣かなかったのに。




新谷くんが、またわたしに背を向ける。

伸ばそうとした手は、2センチくらい、間に合わなかった。


どうしても泣きたくなくて、拳を握って上を向く。

忘れるように残りの黒板消しを手早く終わらせて、わたしも帰ろうと下駄箱へ向かった。
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