気だるげオオカミの不器用ないじわる
グラウンドに出て外の空気を吸ったところで、少し気分が落ち着く。
ずれてきていたリュックを持ち直した時、おーい、と呼ぶ声が聞こえ、ふと横を見ると、サッカーゴールの手前のベンチ付近にいる彼方くんを見つけた。
どんどんこっちに向かってくる。
「彼方くん、おつかれ」
わざわざ走ってきた彼方くんは、夏の暑さにも負けないくらいキラキラの笑顔で、ご機嫌そう。
「沙葉ちゃんに、ちょっと用があって」
「え?」
「あの、この間の……ありがとう!おかげさまで、志穂とうまくいったから」
「……ふっ、それ、苗村さんからも聞いた」
「ええ!」
ふたりして同じ日にありがとうとか、なんか微笑ましいというか、なんというか……うん、ふたりらしい。
性格も合いそうだし、どっちも、なんか、おっとりしてるし?