気だるげオオカミの不器用ないじわる


ガシャンと、サドルらへんがガードレールにぶつかった拍子にーーーーボットン。。

自転車に乗っていた人の携帯と、それにつけられていた可愛らしいキーホルダーまで一緒に川に落ちてしまった。




「ご、ごめんなさい!」


反射的に謝ったわたしに、


「……あ、大丈夫。
俺がポッケに入れてたのも悪いし。怪我なかった?」


こっちがぶつかったのに。
携帯まで落としちゃったのに。

いやな顔ひとつせず、優しく笑ってくれたのが彼方くんだった。



その笑顔に胸が高鳴ったのは、既視感があったから。

引き出しの奥にしまってある、わたしを救ってくれた大好きな絵本。その主人公の笑顔とそっくりで、びっくりした。

そこからたぶん、目で追うようになったんだと思う。

だから、保健委員会で再会した時は、ほんとに嬉しかった。


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