気だるげオオカミの不器用ないじわる








…………え、




触れた柔らかさに心臓がトクンと脈打つ。




その感触は、なにをどう考えても……唇。




チリチリと体のどこかで痺れるような電流が走って、指先が偏った形のまま浮遊する。


ぼやけた視界のなかで、紫色に光るピアスだけが揺れていた。








「ふ、軽く重ねただけで固まってんの?」



囁かれた生ぬるい声。






あまりにも一瞬の行為に、感情が追いつくのが一歩遅れて…







「っなにするの!?」



理解したとたんに、爆発した。












「…は?」


「いきなりキスするなんてありえない!」



怒りに任せて突き飛ばす。


さっきまで止まっていたようだった呼吸を思いっきり吐いたことで思考力が戻ってくる。







待って、落ちついて、なにが起こった?




……わたしはブレザーを取りたくて、新谷くんはどっかに行きたくて。

でも、行けなくてごめんって言われて、………突然引っ張られて、キス…。

だめだ、意味わかんない!


戸惑っているわたしの視界に、結構な力で突き飛ばしたはずの新谷くんの足がのぞき、反射的に目が合わさる。
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