気だるげオオカミの不器用ないじわる

「沙葉と新谷くんが話してるのなんて、はじめて見たんだけど」


怪しげに視線を送ってくるサナちゃんに、キスのことがばれないようにゴホンっと咳払いした。


「新谷くんのことはいいよ、わたしが悩んでるのは、彼方くんのことなの!」

「はいはい、じゃあ、今日聞くしかないね」

「今日!?」



そんな、思い立ったが吉日みたいなこと言われても、心の準備が…。










そんなこんなで話しているうちに見えてきた校門をくぐる。

おはようございますと立っている先生に挨拶したところで、



「沙葉ちゃん、おはよう」

「っ、」


右耳が反応してバッと横を向いた。



「彼方くん…!」


登校時間に偶然会えたことと、話しかけてくれた喜びで思わずにやけそうになるのをこらえて、自然におはようと返す。
< 42 / 321 >

この作品をシェア

pagetop