気だるげオオカミの不器用ないじわる
「沙葉と新谷くんが話してるのなんて、はじめて見たんだけど」
怪しげに視線を送ってくるサナちゃんに、キスのことがばれないようにゴホンっと咳払いした。
「新谷くんのことはいいよ、わたしが悩んでるのは、彼方くんのことなの!」
「はいはい、じゃあ、今日聞くしかないね」
「今日!?」
そんな、思い立ったが吉日みたいなこと言われても、心の準備が…。
そんなこんなで話しているうちに見えてきた校門をくぐる。
おはようございますと立っている先生に挨拶したところで、
「沙葉ちゃん、おはよう」
「っ、」
右耳が反応してバッと横を向いた。
「彼方くん…!」
登校時間に偶然会えたことと、話しかけてくれた喜びで思わずにやけそうになるのをこらえて、自然におはようと返す。