気だるげオオカミの不器用ないじわる
「俺は旭彼方、よろしくね」
知ってるんだけど、そう言いたげな目がこっちに向けられて、わたしはサナちゃんがいつもやってくるように腕を弱くつついた。
わたしから彼方くんのことをたくさん聞いているサナちゃんは、もはや、はじめてしゃべった気なんてしないんだろう。
「私、美術室に用あるから、先行くね」
「え」
今度はサナちゃんがわたしの腕をつついて、またあとでね、と高速で遠ざかっていく。
あまりに一瞬で呆気に取られた。
…置いてかないでよっ、緊張するよ。
きっとサナちゃんは気を利かせてくれたんだろうけど、わたしはまだ彼方くんとふたりきりなんてレベルが早い。
どうしよう。
「い、行こっか、彼方くん」
「うん」