気だるげオオカミの不器用ないじわる
サナちゃんがせっかく気を利かせてくれたんだし…。
「か、彼方くんはさ、どうなの…?」
「え?」
「その、仲良い女子とか…付き合ってる人とか、いたりする?」
「俺? 今はいないかなー」
どっくん、脈打った心音と一緒に指先にきゅっと力が入った。
……いないって。
彼方くん、付き合ってる人いないんだ。
嬉しさで震える喉の動揺を隠そうとしたら、ペラペラと早口で言葉が流れ出た。
「そうなんだ。でもモテると思うな、彼方くん」
「そうかな?」
「そうだよ、優しいし!」
いつのまにか小さく握りしめていた拳。
ちょっとオーバーに言いすぎたかもしれない。
彼方くんの目が少し見開く。
「あは、沙葉ちゃんっていつも全力って感じだよね」
「う、あ……だめかな?」
「ううん、逆。めっちゃいいと思う!」
内側から喜びの波が広がっていくように心が弾む。
今日は朝からいい1日になりそうな予感がした。