気だるげオオカミの不器用ないじわる
旭 彼方(あさひ かなた)くん。
わたしの好きな人。
出会った日はクリスマスイブで。
あの日は偶然だったけど、そこから保健委員会で一緒になって、何度か喋ったこともある。
彼方くんと同じクラスになれたなんて、夢みたいだ。
「おーい、沙葉?」
はっ…。
どうやら、ぼーっとしてたみたい。
サナちゃんがわたしの顔の前で、ひらひらと手を振らせている。
「ごめん、なんか言ってた?」
「もー、またぼけっとして。早く教室行こって言ったの」
「あ、そうだね、行こ行こ」
そろそろ周りのみんなも移動しはじめている。
わたしたちも、その廊下の流れるような人だかりに乗るように教室を目指した。