醒めるな、甘酔い
涙ぐむ視界で必死に俺の名前を呼ぶ呉羽を見て思った。
どうしようもなかったその日、本音を曝け出せる相手が俺だったのなら。
俺しかいなかったのなら。
もがいて、苦しくて。
そんな時の縋りでもなんでもいいから、しがみついたのが、俺なら。
それでいい。
たぶん、俺は、おまえの最後の砦でいたいんだと思う。
翌朝、自分の行動を思い出した呉羽が、ごめんなさいと全力で謝ってきたのをよく覚えている。
自分も酔ってたし、呉羽のせいだけじゃない、気にするなと、俺はそんなことを口にしていた。
すべては酔いのせい。
そうすれば、自分の感情をぶつけてしまわなければいけないこともなかった。
暗黙の了解で、なかったことにするという形になり、呉羽はすぐに以前と同じように接してきた。
月日も流れて、あれから俺たちは問題なく幼なじみを続けられている。
それなのに今、その関係を壊したい衝動に駆られる。
それもこれも、今日のせいだ。
12月28日。
彼女はいるけど誕生日プレゼントくらいあげてもいいだろってか?
冗談じゃない。
止める資格すら持ち合わせていないのに、イラつきだけは一人前に湧き上がる。
いつのまにか噛み締めていた唇がヒリヒリと痛み、よりいっそう俺の機嫌を悪くさせた。