醒めるな、甘酔い
「ていうか、湊にはあげる理由がないよ、もう」
「だっておまえ、未練があるんじゃ…」
「なっ、わたしそこまで未練がましくないよ。もうとっくに吹っ切れたもん」
踏み込めなかったからこそ、知らなかった真実に、開いた口が塞がらない。
だって普通、思うだろ。
積極的ではない呉羽が毎日オシャレして、話しかけ続けて、それでも届かなくて。
今の今まで他の男からの告白を断るのだって恋人をつくろうとしないのだって、まだアイツに気持ちが残ってるからじゃないのかって……思うだろ。
「このプレゼントは壱成の。唇の乾燥に効くリップ。昨日、お母さんとデパート行った時、店員さんにいろいろ聞いて、これにしたの。クリスマス会えなかったし、遅くなったけど、プレゼント」
とんでもない勘違いをした俺に、頬を膨らませた呉羽が、はい、と紙袋を渡してくる。
「……男にリップかよ」
「っ、もうあげない!」
「呉羽」