醒めるな、甘酔い
どれくらい経ったのか、呉羽がぽつりと呟いた。
「……えっと、すきって、あの……女の子としてですか…」
珍しく敬語になるくらいには焦ってるらしい。
「あぁ」
短く肯定すると、呉羽が小さくため息を吐いたのがわかった。
「……なんで先言っちゃうの。今日、わたしから言おうと思ってたのに」
「………は?」
今日で2度目の驚きが飛び出す。
「朱里ちゃんには今日初めて言ったし、食堂ではテンパって誤魔化したりしたけど、今日、プレゼント渡して、壱成に……告白するつもりだった」
弱々しい声は恥じらいを含んでいて、想定外の状況に思考がフリーズする。
「い、いつからだよ」
「…3ヶ月くらい前、女の子が壱成に告白してたの見た時くらいから」
「……それ、本気で言ってんの?」
「う、ん」
……やばい。
途端にそう思った。
呉羽が俺を好きとか、なんか、いろいろ、やばいだろ。
なんだよ、これ、夢か?
と思ってつねってみた頬は顔が引きつるほど痛かった。
だからとりあえず、文句を吐いた松永には心のなかで謝っておく。
ていうか、
「言うの、おせえよ」
「しょ、しょうがないじゃんっ。そういう壱成こそ、いつから好きだったの」