醒めるな、甘酔い
「……わかんねーけど、5年以上は前から」
「っ……え」
あー、くそ。
思いもよらなかったというような顔に苛立ちが募ってうつむく。
おまえだけなんだよ、気づいてねえのは。
松永も、周りのやつらも、察してるやつは多かったのに、当の本人だけ、隣でへらへら笑ってやがる。
「言っとくが、俺の方が想いは上だからな」
「っ………わたしも、たぶん、負けてない、から」
たどたどしくそう言いながら、俺の服を掴んでいる呉羽の手に力が込もる。
唐突に顔が見たくなった。
「呉羽、こっち向け」
「…いや」
「なんでだよ」
「なんでも」
「却下だ、顔見せろ」
「…っ」
抱きしめていた腕から解放して呉羽を見れば、耳まで赤く染まった顔がそこにあった。
もうほんとにやだ、と焦った声を出す呉羽の頭を引き寄せて、そのままお構いなしにキスをする。
「なんでおまえ、そんなに可愛いんだよ」