醒めるな、甘酔い



各々メニューが決まり、先に食べていたふたりの前、正確には呉羽の向かいに俺は座った。

これがいつもの定位置。



「ねー聞いてよー、あたしの妹、もう彼氏と同棲したいとか言い出してんの。まだ中学生だよ?」

「リンカちゃん、可愛いからね」


今日は髪を編み込んでいるのか、ふわっとした水色のゴムで結わえられている一束が呉羽によく似合っている。



「可愛いけどだよ!どう思うよ、壱成」

「あ?…まぁ、いいんじゃねーの」

「なんだぁ、その空返事は。
ぜったい聞いてなかったでしょ!」



松永に軽く図星を見破られ小さく肩をすくめると、その横で呉羽がふふっと笑う。

それを見てまた俺は、その笑顔に目を向けてしまう。


これじゃあダメだと思い、おとなしく昼食に集中していた俺の食べているメニューを見て、今度は呉羽の顔が曇った。



「壱成、また麺類なの?」

「あぁ」

「お肉とか野菜とか、ちゃんと栄養あるものも摂らないと」



だからずっと唇のカサカサが治らないんだよ、と付け足される。

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