醒めるな、甘酔い

呉羽の言うとおり、寒い季節だからか、最近、唇が乾燥してきたのが嫌で何度か愚痴っている。

冬は好きじゃない。


「はい、肉だんごも食べて筋肉つけるんだよ」


唇の乾燥と筋肉になんの関係があるんだ。すぐに浮かんだ疑問は喉の奥にしまっておいて、小皿に置いてくれた肉だんごを口に運んだ。

夫婦か!と前からツッコんできた松永には苦笑いを返す。



「ほんと、ふたりって謎よねぇ。あたしからしたら、とっくにくっついててもおかしくないくらいの距離感とか空気、数えきれないほど感じてるんだけど」


俺の気持ちを知っている松永は時々こうやって探りを入れてくるけど、呉羽の答えは決まってこうだ。


「幼なじみだよ、わたしたちは」



……だから、なんなんだよ。


見えない線が引かれているなら、そんなもの壊してやりたいと思うけど、それをしないのは、呉羽の胸の内にいるアイツには勝てないんだろうと半分諦めてしまっているからだ。

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