醒めるな、甘酔い
その気持ちを知った時にはショックを受けたが、それまで幼なじみという関係に甘えていた俺にどうにかする権利なんてなく。
応援とはまた違う、見守っていただけのつもりで。
それでも、どこかで結ばれてほしくないと思っていた奥底の毒が叶ってしまったのかもしれない。
呉羽が誕生日にプレゼントを渡すと意気込んでいたその日、アイツに彼女ができた。
相手は年上の先輩。
詳しくは知らないが、冴木の方がぞっこんだったと、噂で聞いた。
俺が知ってるくらいだから、きっと呉羽の耳にも届いてる。
そう慌てて、そういえば姿の見えない呉羽を探しまわっていたら、まさかの俺のアパートの前だったわけで。
「お酒、ある?」
「…ある」
たぶん、ここでないと答えていたら、また違った未来だったかもしれない。
普段から酒を飲む回数もそれほどない呉羽が冷蔵庫から一番度数の高い酒を持ってきた。それを、なんとなく、俺も一緒になって飲んだ。