ちひろくんの隠れ愛



『───……好きなの…っ』


今の今まで完全に忘れ去っていた。

無邪気に笑っていた過去のわたしを。



「なんだよ、ちょっとはマシな顔になったんじゃん? 今のおまえなら遊んでやってもいーけど」



……こっちから願い下げだよ。

あなたみたいな人。






「久しぶり、千夏(ちなつ)くん。悪いんだけど、わたし急いでるから、そこ通してくれる?」


少し震える手をぎゅっと握りしめながら、ハッキリと言い切る。

すると、意外そうな顔をした千夏くんがわたしの腕を掴んできて。



「“ちーくん”って呼ばねーの?」

「っ、」



……あぁ、そうだった。



「勝手にそう呼んで、完全に俺に懐いてたよな?」




なんで、こんな人を…。




ちーくん、だなんて、この人には一番似合わない。
< 14 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop