ちひろくんの隠れ愛
『───……好きなの…っ』
今の今まで完全に忘れ去っていた。
無邪気に笑っていた過去のわたしを。
「なんだよ、ちょっとはマシな顔になったんじゃん? 今のおまえなら遊んでやってもいーけど」
……こっちから願い下げだよ。
あなたみたいな人。
「久しぶり、千夏(ちなつ)くん。悪いんだけど、わたし急いでるから、そこ通してくれる?」
少し震える手をぎゅっと握りしめながら、ハッキリと言い切る。
すると、意外そうな顔をした千夏くんがわたしの腕を掴んできて。
「“ちーくん”って呼ばねーの?」
「っ、」
……あぁ、そうだった。
「勝手にそう呼んで、完全に俺に懐いてたよな?」
なんで、こんな人を…。
ちーくん、だなんて、この人には一番似合わない。