ちひろくんの隠れ愛







たぶん、昔のわたしは、相当バカだったんだと思う。


中学まで、ろくに男子と関わったことがなかった。かといって、じゃあ女友達はいたのかと聞かれると、そうでもなく。気の許せるような人が、まだいなかったあの頃。


学校の帰り道、一緒に帰ってくれたから。

わからない課題、いつも教えてくれたから。

日直の黒板消し、忘れてるぞーって笑いながら手伝ってくれたから。


そんな些細なことが積み重なって、それが特別だと思い込んでいた。ほかの子たちとは違う、もしかしてわたしのこと…って、そういう淡い期待を抱いた。


だけど。



「わたし、ちーくんのことが好きなの…っ」



思い切った人生初の告白は、



「……ふっ、ハハハハッ、まじウケんだけど」



嘲笑われただけだった。



そこからはよく覚えていない。


どれだけ女子に優しくしたら落ちるのか試してたんだとか。わたしが最初のターゲットだったとか。案外ちょろいとか。

そんな言葉を並べられた気がする。
< 15 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop