ちひろくんの隠れ愛
たぶん、昔のわたしは、相当バカだったんだと思う。
中学まで、ろくに男子と関わったことがなかった。かといって、じゃあ女友達はいたのかと聞かれると、そうでもなく。気の許せるような人が、まだいなかったあの頃。
学校の帰り道、一緒に帰ってくれたから。
わからない課題、いつも教えてくれたから。
日直の黒板消し、忘れてるぞーって笑いながら手伝ってくれたから。
そんな些細なことが積み重なって、それが特別だと思い込んでいた。ほかの子たちとは違う、もしかしてわたしのこと…って、そういう淡い期待を抱いた。
だけど。
「わたし、ちーくんのことが好きなの…っ」
思い切った人生初の告白は、
「……ふっ、ハハハハッ、まじウケんだけど」
嘲笑われただけだった。
そこからはよく覚えていない。
どれだけ女子に優しくしたら落ちるのか試してたんだとか。わたしが最初のターゲットだったとか。案外ちょろいとか。
そんな言葉を並べられた気がする。