ちひろくんの隠れ愛
…やばい、完全にちひろくんの手のひらの上だ。
「俺が不機嫌なの、わかるよね」
ごくり、息を呑む。
一瞬だけ、呼吸の仕方を忘れたような気がした。
「桃瀬さんのせいだよ、ぜんぶ」
なにが、なんて言ったら怒りそう。
それくらい、迫られてる。
「ち、ちひろくんは、」
気になっていることを聞こうと口を開く。
ちひろくんの不機嫌な理由がわたしなら。
いつも隣に座れって言われるのも。
決まったように2人きりになるのも。
「…その、もしかして、」
少しだけ、自惚れていいなら。
「わたしのこと、好きだったり…?」
勇気を出して聞いてみるけど。
どうせ、ちひろくんは、
「自分で考えなよ」
ほらね、教えてくれないんだ。