ちひろくんの隠れ愛
それなのに。
わたしの頬に手を添えるのも。
余裕そうな顔して、実はほんのり赤くなった耳も。
───ぜんぶ、ずるい。
「ちゃんと俺の機嫌とってよ」
くるりと、一束の髪を弄ばれる。
視線が絡んだ瞬間。
「…っ」
ちゅって、唇の端っこにキスが落とされた。
あまりに近い距離にめまいがする。
どうしよ、……心臓持たない。
息、吐けない。
「桃瀬さん」
たぶん、甘い声だけで浮かれてる。
「2つだけ、俺の言うこと聞いて」
そこにNoなんて、選択肢はない。
「髪結ぶのは、俺といる時だけね」
指先が首の後ろに回って、くすぐるように撫でられる。
「それから、」
綺麗な瞳に吸い寄せられたら、
きっと、もう逃げられないのに。
それでも、されるがままになっているのは、
「俺のこと、ちゃんと満たして」
「…っ」
───きっと、もう、逃げたくないからだ。
._END_.