ちひろくんの隠れ愛
「っ、はぁー……」
ちひろくんが視界から消えた瞬間、溜めていた息を吐き出す。
「ぷっ、大丈夫そ?」
「笑わないでよ」
ごめんって謝りながら、隣で笑いつづけるユカちゃんは今日も意地悪だ。
「緊張したんだもん」
ただでさえ大勢の前だったし。
今ですら、何人かの女子はわたしを睨んでくる。
「大変だねー、あの“ちーくん”と生徒会役員なんて」
そう、わたしとちひろくんは生徒会役員メンバー。毎週火曜日は放課後の集まりがあるから、今日は何時からか聞こうと思ったのだ。
だけど、やっぱり、ちひろくんの教室は女子で溢れてた。
そりゃそうだよね、女子から“ちーくん”なんてあだ名で呼ばれるくらい人気なんだもん。
詳しくは知らないけど、中学時代からそう呼ばれているらしい。
モテるなぁ、ちひろくん。
そんなことを考えながら過ごしていると、気づけば空はオレンジ色に染まっていた。