ちひろくんの隠れ愛
続けて放たれた言葉に、ガーン…て、なにかが崩れる音がする。
髪の毛が邪魔って、?
「ごめん」
一応謝ってみるけど、意味がわからない。
髪の毛、ぼさぼさで見るに耐えなかったとか? いや、でも、毎朝ちゃんとセットしてるし。
それとも、長い髪見てるのが単に鬱陶しい…とか?
少し思い悩んでいたうちに結べたらしく、ちひろくんの手がするりと離れていく。
近づかれたら心臓バクバクになるから早く終わってほしいと思ってたのに、あっけない温度に名残惜しさを感じてしまい、自分の矛盾に思わず苦笑いする。
…あああ、頭のなかがちひろくんのことばっかになっちゃう。これじゃだめだ。
集中して目の前にある資料を片付けてしまおうと視線を落とすと、
「やっほー」
この生徒会室の空気には似つかわしくない声がドアを開いて現れた。
「お、いた、ちーくん」
「黙れ」
「冷たいなー、カラオケの誘いに来てやったのに」
軽快なステップでニコニコ足を踏み入れてくるのは、ちひろくんの…
「うざいから帰って」
…たぶん、友達の流川(るかわ)くん。