片恋リグレットに終止符を.
「話せて良かった、じゃあもう行くね」
そんな言葉を残して、今度こそ菜々の背中が遠ざかる。
彼氏の元へ行って寒いねと言う彼女にポケットから出したカイロを渡して、微笑みながら歩いていくふたりは、ムカつくくらいお似合いだった。
もう、本当に乗り越えられてしまった俺の後悔。
心に引っかかっていた糸を自分勝手にもほどきたかったはずなのに、ほどいてなお胸が痛む俺は、正真正銘のバカで。
『私もね、好きだったよ、碓氷くんが』
視界が滲むのは……気のせいだ。
好きだったよ、じゃなくて。
好きだよ、が交わる世界線でありたかった。
本当にどうしようもない、自分で引き起こした結果。
もし……あの時、俺が違う答えを言っていたなら、今も菜々の隣にいれただろうか、なんて。
だから俺はダメなんだと思う。
せめて、けじめをつけろ。
カバンの中から、今の今まで捨てられなかったガムの当たり券を取り出す。
引き換え期間なんてとっくに過ぎている。たったひとつ、心じゃなくて物として残しておいた菜々との思い出。
菜々がいなくなった後、当たりの文字の下に書いた、強がりだらけの『メッセージ』。
もう、これを手放そう。