妖怪の妻になりました
一章
 華やかな香の香りで目が覚めた。やさしい花の匂い。それと木の匂い、微かな煙の匂い。

 そっと瞼を開けば、ゆらゆらと涼しげな色の青い火が風に揺れていた。青い羽織の人影の横に、それはぼんやりと佇んでいる。窓の外から差し込んでいるのは木漏れ日か。

 私の視線に気付いた炎の主が、そっとこちらに目配せをして手を伸ばした。ひやりとした、人肌を感じない指が私の額に触れる。その感覚が、心地よく私の頭を醒ましてくれた。

「おはよう、お嬢ちゃん」
「ん……おはよう」

 布団から気だるく体を起こす私を、青行燈さんが笑った。
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