妖怪の妻になりました
「どうぞ」
「ああ、ありがとう」
「どーもぉ」

 お盆に乗せた湯のみを差し出す。性格も正反対に見える二人を交互に見ていると、何となく常識的そうに見える天狗さんの方が口を開いた。

「そういえば、まだ名乗っていなかったね。僕はこの山の烏天狗。こっちは(ふもと)の稲荷神社に住み着いてる九尾の狐だよ」

 烏天狗さんに、九尾さん。見た目からしてわかりやすいから覚えやすい。

「俺たち、あの青いのとは腐れ縁」
「へえ……なら、私の知らないあの人の話とか」
「そりゃもう、沢山知ってるよ」
「聞かせてください!」

 そう言うと、眉を下げて烏天狗さんが微笑んだ。九尾さんも、口角を小さくあげて楽しそうに尻尾を動かしている。共通の話題があると、会話がどんどん弾むのが楽しい。

 しばらく夢中になってお話を聞いている中、湯呑みを置いた烏天狗さんが軽く部屋を見渡して言った。

「そういえば、夫婦なのに子供はいないんだね」
「えっ」
「……ほんとだ。腹にもなんもいないじゃん」
「えっ、何を」

 じっと私のお腹辺りを見つめる九尾さん。怪しい目だ。何となく怖くなって手で隠すと、何もしないよ、とへらへら笑われた。
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